日蓮宗の教え

日蓮宗の所依の経典はいうまでもなく「法華経」です。 紀元1~2世紀の成立とされ、漢訳では鳩摩羅什訳の「妙法蓮華経」(八巻二十八品)がもっぱら 用いられています。

「法華経」は伝統的には 「第十四安楽行品」と「第十五従地涌出品」で前半と後半にわけられ、前半が統一的真理(一乗妙法)を 明かした「迹門」、 後半が永遠の仏(久遠の釈尊)を明かした「本門」となっています。

日蓮聖人の教えは中国天台宗の開祖とされている天台大師智顗(538~597)の築き上げた仏教体系を基盤にしています。 智顗は「法華経」を最重要の経典として位置付け、彼の「法華経」に関する考えは「法華玄義」「法華文句」「摩訶止観」 という3つの書に示されています。 (これを「法華三大部」という)

天台宗が「迹門」に重きを置くのに対して、 日蓮宗は「本門」に重点を置き、「第十六如来寿量品」を「法華経」の中心と定めています。 そしてその最も基本となる教えと実践が 「五義(五綱)」と「三大秘法」です。

「五義」とは、「法華経」こそが末法の世に生まれたわれわれを救うために説かれた経典であると論証したものです。 すなわち「法華経」は 釈尊一代の教えの中で最もすぐれたもので(教)、我々凡夫(一般の人間)を対象にした(機)、 この末法の時代に適したもので(時)、日本の国や 社会の状況に照らしてみても(国)、仏教が説き広められてきた順序や歴史に照らしてみても、 末法の世に「法華経」の教えを伝えるために釈尊から 遣わされた大導師である日蓮聖人が教えを説き明かすことからみても、(序、師)、 すべてにかなった経典であるというものです。

「三大秘法」とは「本門の本尊」「本門の戒壇」「本門の題目」をいい、「法華経」本門の教えをより深めるために信仰し、 実践すべき対象を表しています。本門の本尊は「久遠実成本師釈迦牟尼仏」で釈尊のことです。

日蓮宗では、中央に「南無妙法蓮華経」と大書し、 左右に釈迦牟尼仏をはじめ多くの諸仏・ 諸菩薩・諸天善神等の名を記した「大曼陀羅」を本尊の形式としています。

本門の戒壇の、戒壇とは本来仏教の戒律を受ける 施設をさしますが、ここでは「法華経」を受持し、その教えを実践することが戒律であり、その実践の場が、 国や社会という戒壇であるということをしましています。

第三の本門の題目とは、「南無妙法蓮華経」を指しますが、この七文字には奥深い「法華経」の 教えが集約されており、我々を救う働きを示し、 また、これを称えることによって、我々に正しい法華行者としての自覚がもたらされるとしています。

 

○お題目

妙法蓮華経(法華経)では、「是好良薬 今留在此(ぜこうろうやく こんるざいし)」といって、このお経は末法の人々を救う良薬、と譬(たと)えています。 日蓮聖人は、南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)と唱えれば、良薬を服用したことで心身の病が治る、という功徳(くどく)が自然に得られる、と教えました。

意(こころ)に妙法蓮華経の信心を持ち、口に南無妙法蓮華経と唱え、身に妙法蓮華経を実践すれば、過去の罪障(ざいしょう)を消し去り、成仏(じょうぶつ) することができます。

 

 

○ご本尊

日蓮宗の信仰の対象であり、救いを表現する本尊(ほんぞん)は、久遠実成本師釈迦牟尼仏(くおんじつじょうほんししゃかむにぶつ)です。 本尊にはいろいろなかたちがありますが、文字で表現した曼荼羅本尊(まんだらほんぞん)と、仏像で表現した一塔両尊四士(いっとうりょうそんしし)が代表的です。

 

○法華経

法華経は、自身の悟(さと)りばかりを求めて他人を救おうとしないから成仏できない、とされていた二乗(にじょう)の人々も成仏できる、というお経です。

法華経は、80歳で亡くなったお釈迦さまが、実は永遠に存在しつづける仏である、と教えているお経です。

お釈迦さまは父、人々は子、とも書いてあります。 父であるお釈迦さまが永遠に存在しつづけるのなら、子である人々も永遠に存在しつづける、子が父になるように、迷っている人々もいつかはお釈迦さまと同じように仏になれるのです。